ふるさと納税は、年収や各種控除の内容によって寄付できる上限額が人それぞれ異なります。
そんなふるさと納税ですが、これから住宅ローン控除を受けようとしている方は、寄付上限額に注意が必要です。もしかすると、住宅ローン控除によってふるさと納税の寄付上限額が少なくなってしまうかもしれません。
今回は、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用した場合に、ふるさと納税の寄付上限額にどのような影響を受けるのかについてまとめたいと思います。

ふるさと納税と住宅ローン控除のおさらい
ふるさと納税
自分の好きな自治体を選んで寄付することで、寄付金から2000円を差し引いた部分が、住民税の控除、所得税の還付が行える制度です。
1年間における寄付先の自治体数によっては、ワンストップ特例制度を使って簡単に申請することができます。
但し、ふるさと納税以外で確定申告が必要な人はワンストップ特例制度は使えず、ふるさと納税についても同様に確定申告して申請することになります。
- 自治体数が5つ以内かつ確定申告が不要な人
⇒ワンストップ特例制度
(住民税からのみ控除) - 自治体数が6つ以上
⇒確定申告
(住民税と所得税から控除)
どちらの申請方法を選んだとしても、ふるさと納税で控除されるトータルの額は同じです。
ただ、控除対象が異なるため、人によっては最終的な控除額に影響が出てきます。(ここがポイント!)
ワンストップ特例制度では住民税からのみ控除されますが、確定申告する場合は住民税に加えて、所得税からも控除されます。
住宅ローン控除
(正式名称:住宅借入金等特別控除)
マイホームを住宅ローンを組んで購入した場合に、10年間に渡って毎年ローン残高の1%を所得税と住民税から控除できるというものです。
住宅ローン控除を申請する初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は、確定申告が不要な会社員であれば年末調整で済ませることができます。
- 住宅ローン減税を申請する初年度
⇒確定申告 - 2年目以降
⇒(自営業)確定申告
⇒(会社員)年末調整
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用パターン
では、結局のところ併用する場合にどういった申請方法となるのか整理すると、
パターン | ふるさと納税 申請方法 |
ふるさと納税 控除対象 |
住宅ローン控除 申請方法 |
住宅ローン控除 控除対象 |
確定申告 ケース |
確定申告 | 住民税 所得税 |
確定申告 | 住民税 所得税 |
確定申告 不要ケース |
ワンストップ特例制度 | 住民税 | 年末調整 | 住民税 所得税 |
大きく2つの申請方法に分けられます。
自営業の方はどっちにしても確定申告が必要となるため、確定申告ケース1択になります。
会社員の方は住宅ローン控除を申請する初年度は確定申告ケース、2年目以降は確定申告不要ケースとなります。
今回、ふるさと納税の寄付上限額が少なくなってしまう可能性のある問題ケースは、この確定申告ケースになります。
次から詳しく見ていきます。
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用した時の計算
まず、所得税と住民税がどのように計算されるについて、分かりやすくするため簡略化して整理してみました。
- 給与所得=年収-給与所得控除
- 課税所得=①給与所得-所得控除
- 所得税=②課税所得×所得税率
- 住民税=②課税所得×住民税率
これを踏まえて、各ケースでふるさと納税と住宅ローン控除を併用した場合の計算順番について見ていきます。
確定申告ケース
住宅ローン控除を申請する初年度、または、自営業の方の場合のケースになります。
- 給与所得=年収-給与所得控除
- 課税所得=①給与所得-所得控除
⇒所得控除の1つとして、ふるさと納税が控除される - 所得税=②課税所得×所得税率
⇒住宅ローン控除がこの所得税から控除される - 住民税=②課税所得×住民税率
⇒所得税から引け切れなかった住宅ローン控除が、住民税から限度額まで控除される
⇒ふるさと納税が住民税からも控除される
つまり、所得税からふるさと納税→住宅ローン控除、住民税から住宅ローン控除→ふるさと納税の順番で計算されます。
確定申告不要ケース
住宅ローン控除の2年目以降で、かつ、会社員で年末調整できるケースになります。
- 給与所得=年収-給与所得控除
- 課税所得=①給与所得-所得控除
⇒ここではふるさと納税は控除されない - 所得税=②課税所得×所得税率
⇒住宅ローン控除がこの所得税から控除される - 住民税=②課税所得×住民税率
⇒所得税から引け切れなかった住宅ローン控除が、住民税から限度額まで控除される
⇒ふるさと納税が住民税から控除される
つまり、所得税から住宅ローン控除、住民税から住宅ローン控除→ふるさと納税の順番で計算されます。
ふるさと納税を「確定申告」する場合と「ワンストップ特例制度」を使う場合の違い
ワンストップ特例制度を使ってふるさと納税をする場合は住民税からのみ控除されることになりますが、確定申告する場合は住民税だけでなく、所得税からも控除されることになります。
これによって、ワンストップ特例制度を使う場合に比べて、確定申告した場合のほうが課税所得が少なくなり、また、課税所得に一定の割合を掛けて計算される控除前の所得税と住民税も少なくなります。
項目 | 確定申告 ケース |
確定申告 不要ケース |
課税所得 | 少なくなる | 多くなる |
所得税 (控除前) |
少なくなる | 多くなる |
住民税 (控除前) |
少なくなる | 多くなる |
つまり、確定申告することで控除対象となる所得税・住民税が少なくなるため、
- 所得税から差し引ける住宅ローン控除が減る
- 住民税から差し引く住宅ローン控除が増える
(住民税からは差し引ける上限があることに注意) - 住民税から差し引けるふるさと納税が減る
ということになってしまうんです。
なお、ワンストップ特例制度を使う場合(確定申告不要ケース)では、このようなことは起こりません。
ふるさと納税を確定申告する場合は寄付上限額に注意!
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用した場合のふるさと納税寄付上限額の影響についてでした。
◆ふるさと納税をワンストップ特例制度を使う場合は問題なし
◆ふるさと納税を確定申告する場合は、住宅ローン控除も含めて寄付上限額を計算すること
ちょうど私は住宅ローン控除を申請する初年度だったので、確定申告をしました。
ただ、確定申告する場合とワンストップ特例制度を使う場合とでふるさと納税の寄付上限額が変わるなんて知らず・・・
約1万円ほど、本当に寄付をしてしまいました・・・
慈善事業をしたと思って、割り切ることにします。